マウスピース症例を5000人以上行った歯科医師が思うこと
以前、マウスピース症例を1000人以上行った歯科医師が思うこと
という題名の記事を書いたところ、沢山の方に読んで頂き、頻繁に問い合わせを頂くようになりました。
今回は、その時から更に症例数を重ね、この度5000人を超えたので、新たに記事を書いていこうと思います。
少し長いですが、お付き合い頂ければ幸いです。
◆◆◆目次◆◆◆
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0.マウスピースへの情熱と軌跡
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私は、歯学生時代からマウスピースに興味・関心があり、自身でもよく技工室を借りて製作をしておりました。
歯科医師免許を習得し、歯科医師として治療を行うようになってからも、マウスピースに特化した歯科治療に可能性を感じ、それらを使用した治療を行ってまいりました。
結果として、マウスピースを使用した治療を開始してから、早いもので8年の年月が経過いたしました。
特に、就寝中つけるナイトガードと、スポーツ中つけるスポーツマウスピース(マウスガード)に関しては、かなりの症例数を診て、試行錯誤し、研究してきております。
マウスピースを作成して治療した患者様の数は、延べ5000人に達し、その分野のプロフェッショナルと名乗っても良いのかなと感じております。
昨今、マウスピースを使用した治療方法が、あちらこちらで注目され始めています。
この経験の拡散のために、マウスピースについて徒然と書いていこうと思います。
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1.マウスピースの種類
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まず、ひとくちにマウスピースといっても、様々な種類があります。
ざっくり下記の7つです。
① 夜寝るときに歯ぎしり(ブラキシズム)対策のために使用する『ナイトガード』
② スポーツ時の歯牙、顎部の保護のため使用される『スポーツマウスピース(マウスガード)』
③ いびきの軽減のために使用される『スリープスプリント』
④ 顎の関節に不調をきたしたときに使用する
『顎関節スプリント』
⑤ 歯科矯正時に使用される『矯正用マウスピース』
⑥ 歯科矯正終了後に歯列の後戻り防止のために使用される『保定用マウスピース』
⑦妊婦さんが出産時に使用する『マタニティーマウスピース』
どのマウスピースも形は似ていますが用途、効果は大きく異なります。昔からマウスピースを使用した治療はありましたが、近年その需要が爆発的に大きくなってまいりました。
※①②③に関しては、市販品(既製品)とオーダーメイド品の両方があります。
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歯ぎしり対策用マウスピースのナイトガード、スポーツ時に使用するマウスピースのマウスガード、いびき用マウスピースのスリープスプリントの3つのマウスピースには市販品とオーダーメイド品があります。
市販品は3商品とも大まかに作られたゴム状のマウスピースをお湯で柔らかくし、歯に直接添わして合わせていく商品です。
オーダーメイド品は歯科医師または歯科医師の監督下の元で歯科衛生士が歯の型取りを行い、歯型の石膏模型を製作し、それを元に樹脂シートを吸引加圧装置を用いて成形製作する商品です。
では、二つのマウスピースの違いは一体なんでしょうか?
お互いに良い点、悪い点があります。
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市販品
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《良い点》
① 安価である▶︎1000~3000円程度です。
② 手軽に購入できる▶︎実店舗、インターネット店舗で簡単に購入可能です。
③ 購入から装着まで時間がかからない▶︎購入後、短時間で装着可能です。
《悪い点》
① 適合が悪い▶︎U字型のゴム状のマウスピースをお湯で柔らかくし、ご自身で歯に直接添わして合わせていくものなので、どうしても適合が悪く、お口の中にピッタリ合いません。
② 違和感が強い▶︎大まかな作りのマウスピースですので、刺激を敏感に感じるお口の中に入れると異物感を強く感じることがあります。
③ 大きい▶︎
④ 喋ることができない▶︎適合がよくないので、喋ると落ちてくる為、装着したままうまく喋ることは困難です。
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オーダーメイド品
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《良い点》
① 適合が良い▶︎歯の型取りを行い、歯の模型上でマウスピースを製作するので、ご自身の口に一致した適合のよいピッタリとしたマウスピースが出来上がって来ます。結果素晴らしいフィット感となります。
② 違和感が少ない▶︎ご自身の口の中の構造に一致したマウスピースな為、違和感が少なくなります。
③ 喋ることができる▶︎歯ぎしり対策用マウスピースのナイトガード、スポーツ時に使用するマウスピースのマウスガードに関しては、装着中問題なく会話をすることができます。
いびき用マウスピースのスリープスプリントは、オーダーメイドで作られますが、上下の歯に装着するタイプのマウスピースですのでスムーズに喋ることは困難です。
《悪い点》
① 値段が高い▶︎市販品と比べ値段が高いです。
(※ナイトガードに関しては、歯科医療保険改正により5000円ほどしたものが、3000円ほどとなりました。)
② 手軽に購入が難しい▶︎歯科医院において型取りと製作が必要ですので、手軽に購入することが難しいです。
③ すぐに装着できない▶︎型取りとマウスピースの製作の時間が必要です。
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その他のマウスピース
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▼顎の関節に不調をきたしたときに使用する顎関節スプリント
顎関節治療用のマウスピースには市販品はなくオーダーメイド品のみです。私自身治療において、様々なケースの顎関節症の患者様に対して使用してきましたが、即効性が高い装置であると感じます。
装着によりどのような効果があるのかというと、装置装着により下の顎を下前方に少し出してあげることが出来、それにより顎関節部の圧迫圧の緩和に繋がります。圧が軽減する結果として治癒していくというものです。
▼歯科矯正時にしようされる矯正用マウスピース
以前は歯科矯正と言うと、ブラケットと言う金属部品を歯に貼り付けて、そこにワイヤーを装着し、歯を動かしていくというものが主流でした。しかし、近年3Dプリンターの登場によりパソコン上で歯列矯正イメージを構築し、それに合わせたマウスピースで歯を動かして行く方法が登場してまいりました。
具体的な矯正用マウスピースでの歯の動かし方は、現在の歯の並びから目標とする歯の並びに向けて数個マウスピースを作成し、マウスピースを交換しながら歯を動かしていくものです。マウスピースは透明で、見た目に影響がないので好まれる方が多いです。
▼矯正終了後に歯列の後戻り防止のために使用される保定用マウスピース
矯正終了後にしようする装置は様々なものがありますが、手軽で見た目に影響がないマウスピースタイプのシェアが近年大きくなってきております。
▼妊婦さんが使用するマタニティーマウスピース
実は出産時に歯を破損したりするケースは多いです。その対策して出産時用に使用するマタニティーマウスピースを装着される妊婦さんが近年ふえてきております。
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3.患者さまに数多くのマウスピースを装着して感じること
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ありがたいことに歯科医師になってから、大変多くの患者様にマウスピースによる歯科治療を行わせて頂いております。
マウスピースは型取りをして作成し装着するものですので、歯科治療においては比較的短期間で行うことが出来る部類ですが、効果は全体的に良好だと感じられます。
ただ、どの種類のマウスピースもですが、患者様によって厚さ、堅さ、大きさなど適切なものを歯科医師が選択し、その上で装着時に微調整を行うことが必須だと分かりました。
また、装着後選択が不適切だと診断した場合は、早急に適切なものに切り替えることが重要であることもわかりました。軽度でも合わないものを使用していると、逆に歯牙、顎関節に負担となり状態を悪化させることにつながることもあります。
しっかりと歯科医院で見ることの重要性を感じております。
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4.マウスピースを検討している患者さまへ
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① 歯ぎしり・食いしばり対策のための『ナイトガード』
歯ぎしり(ブラキシズム)や食いしばり(クレンチング)を自覚している、他者に指摘されている、顎に疲れが生じている、全体的に歯が凍みてきているなどの症状が出ている場合は、一度マウスピースを専門としている歯科医院で相談されることをお勧めいたします。
一般的に時間が経てば収まることは多くはないです。
また、一度緩和しても再度症状が出るケースが多いです。
②スポーツのための『スポーツマウスピース(マウスガード)』
格闘技、バスケット、ラグビー、サッカー、ラクロス、アメリカンフットボールなどのスポーツを定期的に行われている方は、是非マウスピースを専門に扱う歯科医院にてマウスピースを製作し使用するようにしてください。
スポーツパフォーマンスの向上、そして顔面・頭部における重篤な怪我リスクを回避出来る可能性を高めることが出来ます。
プロのスポーツ選手は当然のことですが、お子様の習い事や部活動、趣味でスポーツをされる方でもリスクは同じです。特にコンタクトスポーツ(接触が多いスポーツ)をされている方は検討されてみてください。
③ いびきの軽減のための『スリープスプリント』
いびきの多くは睡眠時に口と喉の交通が狭くなる、閉鎖されてしまうことにより生じるケースが多いです。
治療のアプローチは、耳鼻科医師による外科療法(咽頭閉鎖部のレーザーなどによる切開)、CPAP療法(マスク装着)、耳鼻科的治療(アレルギー他の鼻詰まりなどの治療)、歯科医師によるマウスピース療法があります。
歯科領域からのアプローチであるマウスピース療法は、型取りを行い製作いたしますので、
比較的短時間、低費用で行うことができるため検討の余地がある治療法だと思われます。
既に耳鼻科でCPAP治療を提案されている患者様は、一度マウスピースを専門に取り扱っている歯科医院でも相談されることをお勧めいたします。
④顎関節不良のための『顎関節スプリント』
顎の関節に痛みが生じる、咬むと耳の下あたり痛い、顎がカクカクなる頻度大きさが増している、口が開かなくなってきた、口をあけるときまっすぐに開かないなどの症状が出ている場合は速やかに顎関節症を得意としている歯科医院で相談することをお勧めいたします。
顎関節に症状が出ている場合は時間経過とともに症状が重篤化するケースが大変多いです。
特に痛みが出てきている、口が開かなくなったという症状が出た場合は直ちに相談をしてみてください。
⑤ 歯科矯正のための『矯正用マウスピース』
矯正には様々な種類がございます。
ワイヤーやブラケットといった従来型の矯正装置だけではなく、マウスピースを使った、目立たない矯正方法も場合によっては考えられます。
矯正の期間が短くなるわけではありませんが、矯正をしていることを知られたくない方も大変多くいらっしゃいます。
選択の一つとして、インビザライン等のマウスピース矯正について専門医に相談することをお勧めいたします。
⑥ 後戻り防止のための『保定用マウスピース』
歯科矯正治療が終了したあと、もとの歯並びに戻ろうとする力が必ず働きます。
後戻り防止装置(保定装置)には様々な種類がございますが、マウスピースタイプはその中の一つです。
歯に密着して違和感が少ないことが特徴です。
興味がある場合は専門医に相談してみてください。
⑦妊産婦のための『マタニティーマウスピース』
出産時には、全力で食いしばるので、大変大きな力が口腔内にかかることになります。
そのことから、出産後に歯や顎関節に異常が生じることは珍しくありません。
口腔内のリスク軽減に興味がある妊婦さんは、マウスピース専門もしくはマタニティー専門の歯科医師に相談してみることをお勧めいたします。
年々マウスピースの需要が高まっていると感じます。
興味がある方は、一度マウスピース専門医に相談してみることがよろしいかと思います。
私ごとですが、これからもマウスピースと共に歯科医療に貢献出来ればと考えております。
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