子どもの乳歯が抜けない原因と対処法
子どもの乳歯が抜けないことは、親にとって心配の種となる問題です。乳歯が正常に抜けない場合、歯並びの乱れや不正咬合(噛み合わせの悪さ)、むし歯のリスクが高まるなど、さまざまな影響が及ぶ可能性があります。この記事では、小児の乳歯が抜けない問題が生じる原因やその影響、対処法などについてくわしく解説します。
乳歯とは
乳歯とは、生後6ヶ月ごろから生え始め、2歳半から3歳頃までに生え揃う20本の歯を指します。通常、乳歯は6歳前後になると自然に抜け始め、永久歯へと生えかわります。乳歯は食べ物の咀しゃくや発音を助けるだけでなく、顎の成長を促す、永久歯を誘導する、表情をつくる、などの重要な役割があります。
乳歯が抜けない原因
通常、6歳頃になると乳歯は自然に抜け始めますが、正常な生えかわりの時期を過ぎても乳歯が抜けずにとどまる場合があります。乳歯が抜けない原因はさまざまですが、以下にあげるような原因が考えられます。
乳歯の歯根の吸収不全
永久歯は、先に生えている乳歯の歯根を吸収しながら生えてきます。この乳歯の歯根の吸収が生じることで、乳歯は自然と抜けます。何らかの原因で、乳歯の歯根の吸収が不完全である場合、乳歯が抜けずに残ってしまうことが考えられます。
永久歯の萌出異常
永久歯の位置や方向がずれて生えてきた場合、乳歯が押し出されずにそのまま残ってしまうことがあります。
永久歯の先天的な欠如
先天的に永久歯の数が少ない「先天性欠如歯」も、乳歯が抜けない原因となります。約10人に1人の割合で先天性欠如歯の子どもがいることが明らかになっていますが、先天性欠如歯となる原因はわからないことがほとんどです。
乳歯が抜けないことによる影響
歯並びの乱れ
乳歯が抜けないまま放置すると、永久歯が生えるのが阻害されたり、永久歯が骨の中に埋もれて留まったままの状態になったりします。これらは、将来的に歯並びが悪くなるリスクを高め、矯正治療が必要になることがあります。
噛み合わせが悪くなる
永久歯が正しい位置や方向に生えることができないと、噛み合わせが悪くなる問題が生じるリスクが高まります。噛み合わせが悪いことにより、食べ物の咀しゃくや発音に支障をきたすことがあります。
むし歯や歯肉炎のリスクが高まる
乳歯はむし歯になりやすいため、乳歯が抜けずに残っているとむし歯や歯肉炎になるリスクが高まる可能性があります。
乳歯が抜けない場合の対処法
乳歯の抜歯
乳歯が抜けずに永久歯が生えている場合、乳歯を抜歯する治療が推奨されることが多くなります。乳歯を抜歯することにより、永久歯が正しい方向や位置で生えてくるようにし、歯並びが乱れるのを防ぎます。
永久歯がない先天性の永久歯欠如の場合、乳歯の抜歯後のすき間を埋めるため、クラウン(被せもの)や入れ歯などによって歯を補う治療を行う必要があります。
矯正治療
抜けずに残っている乳歯がすでに歯並びに影響を与えている場合、矯正治療により歯並びを整える治療が必要になることがあります。必要に応じて乳歯の抜歯を行い、ワイヤーやマウスピースなどを使用した矯正治療で歯を正しい位置に移動させ、すき間を埋めます。
経過観察
次に生えてくる永久歯がない先天欠如の場合、乳歯に問題がなければそのまま乳歯を使い続けることもあります。しかし、乳歯は永久歯よりももろく、むし歯にもなりやすいため、歯の寿命は長くありません。歯科医院での定期健診にて経過観察を行い、状況に応じて適切な治療を行うことが重要です。
まとめ
小児の乳歯が抜けずに残ったままである場合、さまざまな原因が考えられますが、乳歯が抜け始める時期や永久歯が生え始める時期には個人差があるため、容易に異常であると判断することはできません。焦らずに、歯科医師による正しい診断と適切なタイミングでの治療を行うことが重要です。子どもの将来の口腔健康を守るため、日々の観察と定期的な歯科健診を欠かさないようにしましょう。