『サッカーではヘッドギアを 衝撃の蓄積が認知機能に影響』
既存の研究をレビューした結果、サッカーで脳震盪が生じる頻度は1000試合/練習中当たり0.1~2件で、全スポーツでの発生頻度の15%を占めるという。また、脳震盪はサッカーによる傷害の8.6%を占め、原因の多くは選手同士の衝突によるものだった。しかも、脳震盪を経験した人の8割以上が再びアクシデントを起こし、多発脳震盪の確率は未経験者の3.15倍に上る。
脳震盪に比べ衝撃が少ないと思われるヘディングの影響も無視できないようだ。ある調査では、ヘディングを頻繁に行うプロ選手は言語記憶や視覚的記憶が低下し、引退後も、認知機能や集中力に問題が生じることが判明している。
脳震盪、ヘディングを問わず、長期的な頭部へのダメージの蓄積は脳機能にマイナスに働く。いわゆる「パンチドランカー(脳外傷後後遺症)」が有名だが、サッカーでも同じこと。研究者はサッカー選手を頭部傷害から守るため「ヘッドギアの利用や小児のヘディング数制限などが勧められる」としている。
笹川スポーツ財団の推計値(2010年)によれば、日本のサッカー人口は優に1000万人を超えるらしい。成人に限っても、年に1回以上サッカー競技を行っている人は478万人、月に2回以上が182万人、週1回の競技者は104万人に上る。中年の週末サッカーでも脳震盪の危険性はプロ選手と同じ。それどころか、身体能力が衰えているだけに、衝撃を吸収できず大事になりやすい。ヘッドギアやヘディング制限が必須なのは、サッカー少年よりサッカー中年かもしれない。
脳震盪後は神経伝達物質が過剰に放出され、脳代謝が乱れる。通常、頭痛などの症状が治まるには7~10日、脳代謝が正常に戻るには1カ月~1カ月半を要する。週末サッカーで万が一、脳震盪を起こした場合は即、ゲームを中断して安静にすること。その日は身体のみならず仕事はもちろん、テレビ、ネットもご法度。脳機能全体を休ませることが肝心である。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)
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